sayuu(石川県金沢市)
石川県金沢市東山。べんがら塗りの格子窓が並ぶお茶屋街。その一角に、彫金師・竹俣勇壱さんの店、sayuu(さゆう)が、オープンした。同じ金沢市内、新竪町にあるKIKUの姉妹店だ。東山地区は江戸末期、文政年間に加賀藩によって茶屋街が設けられ、現在も往時の雰囲気を残す町並みとなっている。sayuuの建物も、もとはお茶屋さんで築190年、土台は茶屋街が出来た頃までさかのぼる。「最初見に来たときは家は傾いて、ぼろぼろだった」と竹俣さん。もともと古い建物に住みたかったという気持ちもあり、ここに決めたという。
「かなり新しくした」というが、古い建物への思い入れはあちこちにおよぶ。聞けば、新しくみえるのが嫌で、古い建具や板から部材をとって使っているという。扱うのは、オーダージュエリーを中心に、日常に使える食器や小物類。古いもの好きの竹俣さんがつくる指輪やカトラリーは、アンティークのような質感が独特だ。ガラスコップや石けんなど、交流のある作り手の作品も並ぶ。金沢にちなんだ古書をディスプレイしたりと、地元への小さなこだわりも。
和のしつらえに、洋の品がしっくりとなじんで、どこかヨーロッパの古い工房を訪ねたような気さえしてくる。
結婚指輪などの注文製作が多いため、ゆっくり座って相談できるようにと小上がりの空間も設けた。床の間付きの三畳。お茶を嗜む竹俣さんはお茶室としても使うつもりだそう。観光に来た人も、気軽に入ってみてほしいと竹俣さん。お茶屋街を散歩がてら、ふらりと立ち寄るのもおすすめだ。
(文・雨宮ゆか/日々花主宰 写真・雨宮秀也)